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 花まるラボ代表の川島です。
 私は2011年に「花まる学習会」を運営する株式会社こうゆうに参画し、
2014年に現在の花まるラボを設立しました。
 教育に携わりはじめてから今に至るまで、恵まれた環境の子から家族と一緒に暮らすことができない子まで、
多様な子どもたちに接してきました。
 その中で、私が現在の社会を「意欲格差社会」だと思うようになり、
その問題意識に向き合い、花まるラボを立ち上げるに至った経緯をご紹介します。

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 ある児童養護施設を訪れたときのこと。40人ほどの小学生の相手をすることになり、まずは打ち解けようと簡単なゲームをしました。リレー形式のチーム戦。先生のところまで来たらじゃんけんをして、勝つまでバトンを渡せません。じゃんけんにすんなり勝てた方が有利になる、というルールです。色んな場所で子どもたちに人気抜群のこのゲーム。みんなが目を輝かせて、活き活きと躍動する姿を思い描いていました。
 すると、予想外のことが起こります。子どもの多くが、「じゃんけん」をすることを嫌がるのです。躍動するどころか、ゲームに消極的な姿を見せる子どもたち。これまでの私の経験は、そこでは通用しませんでした。

 彼らは、「じゃんけん」という確率に基づいた簡単なゲームにすら、「自信」を持てず、どうせ負けてしまう、と思っていたのです。計算や識字にも確かに困っていたのですが、より根本として、「自分に自信を持てず、それ故に、意欲を持てない」という、大きな問題を抱えていました。
 これが、私がこの社会を「意欲格差社会」だと感じ、問題意識を持つようになった原体験です。

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 有名予備校が一流の先生の授業を「映像授業」として提供したことで、教育の「地域格差」は破壊されました。ただし、この恩恵を受けられるのは経済的に豊かな人に限られ、「所得格差」は依然として残されていました。
 続いて、これを破壊したのが、「MOOCs」や「スタディサプリ」といった、革新的なサービスです。それぞれオンラインサービスとして、前者は大学の講義を無料で受けられるようにし、後者は予備校の授業を月額1,000円で受けられるようにしたのです。

 いずれもすばらしく意義のあることでしたが、そのサービスは、もともと学ぶ「意欲」を持っていて、情報活用リテラシーもある、一部の人しか受けられません。
 むしろそうしたサービスの普及によって、そもそも自信や意欲を持てない人との格差は広がったと思っています。何でも自分で調べられる、学べる時代になったことで、皮肉にも、リテラシーや根本の「意欲」で、差がつきやすい世界になってしまいました。

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 じゃんけんを嫌がるほど自分に自信がない子どもに、「やる気になれば使えるサービスがこんなにあるよ!さあ、やってみよう!」と伝えても、それは意味をなさないのです。そして、そういった意欲、自信を持てない子どもたちは、どんな地域の、どんな所得層においても確かに存在しています。
 なぜ「自信」や「意欲」を持てないか。その答えは「自己肯定感」にあります。子どもにとって、母や家族から受ける無償の愛情、承認によって得られる自己肯定感がいかにその後の成長にとって重要か、ということを実感してきました。自己肯定感は自信につながり、その自信は壁にぶつかったとき、「自分なら乗り越えられる」「きっとなんとかなる」という第一歩を踏み出すことにつながります。

 裏を返せば、こういった環境に恵まれなかった子どもたちは、「認めてもらう」経験が無いことで、いつまでも「自己肯定感」を高めることができず、社会に取り残されていってしまうのです。
 教育格差論争の狭間に置き去りにされた「意欲格差」の問題。これこそが、真に解決すべき課題であると考え、「誰でも」きっかけさえ与えれば、自然に続けていくことのできる「教材」を創ることに心を傾けてきました。

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 「意欲格差」を無くすカギは、「教材」にあると私は思っています。もちろん、素晴らしい教員や学校が存在すれば、それに越したことはありません。しかし、そういった環境に無い子どもでも、素晴らしい教材さえあれば、「自己肯定感」を高める経験を積み、学ぶ意欲を持つことができる。あれこれと教えなくても、「やってごらん」と手渡すだけで、夢中になり、子どもが躍動していく。
 そして、そこにいる先生や大人たちが、その様子を見て、本当に大切なことに気づくことができる。良い教材には、そんな大きな可能性がある。
 子どもたちを集めて研究授業を行い、国内外で1万人を超える子どもに教材を使ってもらいながら試行錯誤を繰り返すなかで、今では、その可能性を確信しています。

 世界中の教育から「意欲格差」が消え去り、全ての子どもたちが活き活きと学ぶ世界を目指して、花まるラボは、これからも一歩ずつ歩みを進めていきます。
 私たちが開発・運営するアプリ「Think!Think!」や、これから産み出していく様々なコンテンツが、少しでもその一助になれば幸いです。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

株式会社花まるラボ代表取締役 川島 慶